299.ジョヨボヨ王の予言

 日本の蘭印侵攻はスラウェシ島のマナド(→208)とスマトラ島のパレンバン(→101)への落下
傘部隊の降下に始まった。ジャワ島の攻略は今村中将(→352)の率いる5万の将兵でもって
1942年3月1日に始まり9日には全島を占領した。
 鮮やかな日本の進攻はインドネシアの住民からジョヨボヨ王(注)の予言の実現として歓迎さ
れた。ジョヨボヨとはクディリ朝(→245)の国王であり、王の編纂したパラダユダ(→947)の深遠
なる言辞が予言としてジャワ人に銘記されてきた。
 「わが王国はどこからか現れる“白い水牛”の人に乗っ取られるであろう、彼らは魔法の杖を
持ち、離れた距離から人を殺すことができる」の予言通り、ジャワは魔法の杖(=鉄砲)を持っ
た白い肌の人(=オランダ人)に支配された。
 その予言の続きは「白い人の支配は長く続くが、やがて北からの“黄色の猿”の人が白い人
を追い出し、とうもろこしの寿命の間、この地を支配した後に“ラトゥ・アディル=正義の神(
339)”の支配する祝福される治世がくる」という。「天から白い布をまとって降りてくる」という落
下傘部隊の予言もあるらしい。⇒「空の神兵」降下 ⇒「空の神兵」降下
  日露戦争(→349)で日本が勝って以来、インドネシアをオランダの軛(くびき)から解放してくれ
る黄色い人とは日本人であろう、とジョヨボヨの予言が密かにささやかれはじめた。日本
(NIPPON)には「Nanti Indonesia Perang Pula Orang Nederland(インドネシアはオランダ人と戦う
だろう)」というシンカタン(→964)が流布されていた。
 このような願望と期待の中で日本の戦勝は見事であり、それまでの絶対支配者であったオラ
ンダ人が黄色い人の日本軍に敗れて捕虜になる有様は植民地でそれまで信じられてきた白
人優位の神話を目の前で根底から覆すものであった。
 日本軍は進攻に際し、後に国歌となったインドネシア・ラヤ(→297)を放送した。オランダに政
治犯として捕えられていたスカルノ(→439)、ハッタ(→443)、シャフリル(→444)等の民族主義者
は日本軍によって釈放された。

 ちなみにジョヨボヨ王の予言は日本軍によるオランダ追放の予言が的中したばかりではな
い。ジョヨボヨ王の予言は今日も信じられている。予言の内容は「黒い蟻が清めた灰に卵を産
む」とか「孔雀が鰐を淫する」というような比喩である。含蓄に富む比喩であるので色々な解釈
が成り立つ。⇒日本の軍票
 ジャワの救世王ラトゥ・アディル信仰もジョヨボヨ王の予言に基づく。ちなみにジョヨボヨはイン
ドネシア独立に続く指導者の名前を【NO-TO-NE-GO-RO】と予言しているという。Sukarno
Suhartoと的中しているが、しかしそれに続く3代目ハビビ大統領、ワヒド大統領もNEではなく、
ジャワ人にとって暫定大統領でしかなかった。次に選出されたメガワティ大統領(→457) のME
はNEに近かったが、2004年の選挙で破れた。
注釈と資料-299
インドネシア専科 大槻重之著 ttp://www.jttk.zaq.ne.jp/bachw308/index.html より